ブラジルのお母さんの味

ドブラジンニャ

ブラジルの家庭料理は、お豆と様々な部位のお肉を煮込んだものが多くあります。代表料理のフェジョアーダもそうですし、もう1つ定番中の定番と言えば、ドブラジンニャが挙げられるでしょう。

ドブラジンニャは、ほぼ同様のお料理が南欧各国にもある、という大西洋を渡ったお料理。イタリアの「トリッパ」スペインの「カジョス」などとは全て、同根のものなのは間違いないでしょう。

焼肉屋さんでお馴染みのミノ(牛の第1胃)のお隣、ハチノス(牛の第2胃)をトマトと白豆、そしてブラジル式の燻製ソーセージとで煮込んだもので、ブラジルでは毎週火曜日のお昼ご飯に食べられるのが一般的。こちらも、ブラジルでは本来ご飯にかけて食べますが、日本人はややボリュームがあり過ぎるかも知れません。カレーのようにご飯なしでは食べづらいというお料理ではないので、そのまま召し上がってください。ブラジル式モツ鍋とも言えるドブラジンニャの美味しさが、きっとダイレクトに体験できることでしょう。

牛・豚料理のレシピ

アホース・デ・アウサ

フェジョアーダ

ブラジル料理の代名詞 フェジョアーダ

ブラジル料理の代名詞 フェジョアーダ

ブラジルを代表するお料理・フェジョアーダは黒いんげん豆とお肉のシチュー。人種の坩堝と言われるブラジルは、世界各国の食文化の影響が色濃く、逆にブラジル独自のお料理となると、案外見かけないものです。
ですがフェジョアーダは違います。ブラジル料理の代名詞として、サンパウロやリオ・デ・ジャネイロにある五つ星ホテルのレストランでも、下町の庶民的な食堂でも、そしてブラジルの人々の家庭でも、食べられ続けているまさしくブラジルの味です。

フェジョアーダはとてもボリューム豊かなスタミナ食。それは作り方を見ても一目瞭然です。お豆とお肉の美味しさや栄養素を、まるごと煮込む雰囲気は、日本のカレーに近いかもしれません。ですが、煮込む具材は、珍しいものばかり。

まず、メインの黒豆。お正月によく食べられる日本の黒豆は、大豆です。ですからタンパク質が豊富で煮崩れることはほとんどありません。一方、ブラジルの黒豆はインゲンです。白アンの材料に使われている白豆の黒いもの、と考えるとイメージしやすいと思いますが、タンパク質はすくなくてでん粉が豊富。栄養素で分類すれば、大豆よりもお芋に近い豆で、煮崩れも起こります。

一方のお肉類。先ず欠かせないものが、ブラジル式生ソーセージのリングイッサ。生のままお豆と一緒に煮込むのではなく、水と油を入れ別のお鍋で炒め煮にします。同じよう下ごしらえするのがベーコン。ブラジルでは特に皮付きベーコンが特徴的です。
さらにはブラジル式干し肉(カルネセッカやシャルケ)も、十分に塩抜きをしてから煮込みます。干し肉類と一緒に煮込むのが、燻製にした豚の耳や尻尾、足、月桂樹の葉。これらと 干し肉を煮ているお鍋に、別のお鍋で煮ていたリングイッサやベーコンを煮汁ごと加え、そのお鍋とお豆のお鍋もドッキング。具から沁みだす出汁やコクは、すべて洩らすことなくいただけるわけ。日本国内では、豚の耳や尾の燻製は中々入手しづらいので、その分を干し肉と燻製したリングイッサのカラブレーザ・デフマーダで補って作るのがおすすめです。

フェジョアーダには定番の付け合せ料理があります。コラードグリーンという青菜のソテー、マンジョッカと呼ばれるキャッサバ芋のフライ、同じくマンジョッカの粉末を油で炒めたファロッファというふりかけ、そしてご飯もニンニクと油で炊いたブラジル式ご飯となります。オレンジをお口直しのデザートに添えれば、ブラジルのセット・メニューができあがりです。

フェジョアーダ

フェジョアーダ

材料(4人前)

  • 黒いんげん豆 300g
  • シャルケ(塩漬け牛肉) 200g
  • リングイッサ(お好みのもの) 300g
  • ベーコン 300g
  • カラブレーザ・デフマーダ 200g
  • 玉ねぎ 2個
  • おろしにんにくorきざみにんにく 適宜
  • 月桂樹の葉 1~2枚
  • 塩・こしょう 適宜
  • ビーフブイヨン 適宜
  • 油 適宜

*作り方*

  1. 黒豆はよく洗ってから一晩水に浸ける。
  2. シャルケを小口に切り分け、一晩水に浸けて塩抜きする。水の交換は3回以上。
  3. ①の豆を水切りして、戻したお豆の約三倍の水と一緒に煮ます。最初は強火で一気に沸騰させ、沸騰したらごく弱火でフタをして煮ます。
  4. リングイッサとベーコン、カラブレーザ・デフマーダを適当な大きさに切り、水と油を半々入れて熱したお鍋で煮る。
  5. 別のお鍋にクシ型に切った玉ねぎとニンニク、水切りした②の干し肉、ブイヨンを入れて煮る。
  6. ⑤のお鍋が沸騰したら、④のリングイッサ、ベーコン、カラブレーザ・デフマーダを煮汁と併せて弱火で煮続けます。
  7. ③のお豆が指で簡単に潰せるくらい柔らかく煮えたら、煮汁の一部を⑥のお鍋に加えて具に色をつけます。
  8. ⑦のお鍋に塩・こしょうを加えて味を調えます。
  9. ⑧に、⑦のお豆を煮汁を切って加え、もう少し煮て出来上がりです。

★フェジョアーダの定番付合わせ料理についてはこちら
ファロッファ / コラードグリーンのソテー / アホース・テンペラード / キャッサバ芋のフライ

★まずは食べてみたい!という方はこちら→フェイジョアーダ(レトルト)

コステレラ・コン・マンジョッカ

コステレラ・コン・マンジョッカ(牛カルビとキャッサバ芋のシチュー)

牛カルビとキャッサバ芋のシチュー

材料(4~6人分)

  • 牛カルビブロック 1Kg
  • マンジョッカ(キャッサバ芋) 400g
  • 缶詰ホールトマト 200g
  • おろしにんにく 大さじ2
  • ビーフコンソメ 大さじ1
  • 塩・こしょう 適宜
  • きざみパセリ 適宜
  • ナツメグ 適宜
  • 水 3カップ

*作り方*

  1. カルビブロックを切り分けて、必要ならば掃除しておく。
  2. 大鍋に①のカルビとにんにく・塩・こしょう・ナツメグを入れて、手でよくもみこむ。
  3. ②に水を入れて煮始める。
  4. ③にホールトマトとビーフコンソメを入れて弱火でコトコト煮る。
  5. ④のカルビが簡単にほぐれるくらい煮えたら(目安3時間)、カルビを鍋から取り出す。
  6. ⑤のスープを強火にかけて一気に沸騰させたら、火を止める。
  7. ⑥にカットしたマンジョッカを入れて火を通す。煮崩れし易いので注意。
  8. カルビとキャッサバ、そしてスープを同じお皿に供する。
  9. 仕上げにパセリをひと振りする。

ボリューム豊かなブラジル風ビーフシチューです。牛カルビのコクとキャッサバ芋のぽってりとした口当たりが魅力。ジャガイモのモサモサ感がありません。

干し肉類

ブラジルの万能食材 シャルケ/カルネ・セッカ

塩漬と乾燥を終え、切り出されたブラジル式干し肉。
熟成によって美味しさが凝縮されています。

日本人には缶詰食品という印象が強いコーンビーフ。でも元々はcorned beef という名前の通り、塩漬けにした牛肉のことです。ブラジルのシャルケやカルネセッカ。これらはまさしく本来の意味のコーンビーフ、つまり塩漬け牛肉です。

ブラジルは国土がとても広くガス・電気・水道といったライフ・ラインが整備されるまでに、とても時間を要しました。当然、食品類の保存も簡単ではなく結果として燻製品や塩漬品、といった保存食が発達。現在でも数多く食べられていますが、その中でも特に身近で、頻繁に食べられているのがシャルケやカルネセッカとなります。

シャルケとカルネ・セッカの違いは乾燥の状態。半乾燥のシャルケに対して、より乾燥させてあるカルネ・セッカですが、いずれも調理する前に塩抜きをするために必ず水に戻します。ですから例えば500gのシャルケやカルネ・セッカを買ってきても、実際に食べる重量は1.5~2倍。

魚肉類の塩漬けは、脱水効果によって腐敗が遅れることだけが、メリットなのではありません。塩の熟成作用により魚や肉が持つ本来の旨味がしっかりと引き出されるのです。

そしてそれは、シャルケやカルネ・セッカも同様。煮込み料理や炊き込み料理、炒め料理に入れれば、お料理全体に深いコクと味わいが。だからなのでしょう。ブラジルのごく日常的な食事では、シャルケやカルネ・セッカが全く登場しない日は、きっとそれほど多くはないと思います。それくらい、どんなお料理にも入っている、ブラジルの万能食材。それがシャルケやカルネ・セッカです。

アホース・カヘテイロ

牛カルビとキャッサバ芋のシチュー

材料(7~8人分)

  • シャルケ 500g
  • トマト 2個
  • 玉ねぎ 1個
  • 油 大さじ2
  • おろしにんにく 大さじ1
  • こしょう 適宜
  • 塩 適宜
  • インディカ米 3カップ
  • 水 4カップ

*作り方*

  1. シャルケを前の晩にひと口大程度に切り分けて水に浸ける(塩抜き)。途中、水は2~3回換えること。
  2. ①のシャルケをさらにサイの目くらいに刻む。
  3. トマトは皮をむいてサイの目に切り、玉ねぎはみじん切りにする。
  4. インディカ米をといで、水切りする。
  5. 炊飯器に④と水、油、塩、こしょう、おろしにんにくを入れる。
  6. ⑤に②と③を入れて、炊飯器のスイッチを入れる。
  7. 炊き上がった⑥をさっくりと混ぜる。

カヘテイロとは、トラック野郎という意味。広い広い国土のブラジルを移動するトラック野郎たちは、時に大平原の真ん中で独り、野営しなければなりません。そんな時、保存食として持ち歩いていたカルネ・セッカとお米、そしてダッチオーブンで作っていたのがこのアホース・カヘテイロ(直訳すると、トラック野郎ご飯)です。

アホース・デ・アウサ

その名の由来は誰も知らない アホース・デ・アウサ

その名の由来は誰も知らない アホース・デ・アウサ

カルネセッカやシャルケ、ジャバなどのブラジル特有の塩漬けしたビーフ。これらをお米と一緒に炊込んだ、アホース・カヘテイロというブラジル料理があります。
同時に、炊込みではなく、お米と塩漬けビーフを別々に調理。最後にトッピングするというお料理も、ブラジルにあります。日本で言うなら炊き込みご飯と丼の差のようなものでしょうか。…趣は全く違いますけれどブラジリアン牛丼、のようなお料理、それがアホース・デ・アウサです。

アホース・デ・アウサ。直訳するなら、そのままアウサご飯となりますが、それではこのアウサとは何なのでしょうか。ブラジル国内でも様々な説が存在しているようですが、よく見かけるのは西アフリカに暮らすアウサ族由来のお料理、というもの。もう1つが、Arroz de Agua e Sal(アホース・デ・アグア・イ・サウ/水と塩のご飯)が訛化してアホース・デ・アウサ、となったというものです。なるほど、確かにアホース・デ・アウサのご飯は単純に炊くのではなく塩が入った味つきご飯です。ですが、これはブラジルの東北部、ペルナンブッコ州やリオグランデ・ノルテ州、セアラ州などでの作り方であって、少し南にいったバイア州では雰囲気が一変します。西アフリカ文化の影響色濃いバイアでは、お米をココナツミルクと塩で炊込み、調理した塩漬けビーフをトッピングするだけではなく、ベジタブル・バナナや塩漬けの海老などもプラスしているんですね。さらには、西アフリカのアウサ族がイスラミックであることから、カルネセッカやシャルケといったビーフが使われますが、イスラミックではないならば、ベーコンで代用してもいい、なんていう解説も目にしたことがありますが。

片や、「水と塩のご飯」説そのままの東北部、片やハウサ族との関わりもありそうに感じられるバイア州。バイアとペルナンブッコは隣り合う州同士なのに、なんとも悩ましいところです。
ただ、料理名の由来は由来として、塩漬けによって旨味が凝縮されているトッピングをタップリ載せたアホース・デ・アウサはシンブルながらも美味しいお料理であることには変わりなし。そしてそのバリエーションとしてココナツミルクや海老が投入されても、味わいのベースとなる部分は揺るぎなく、改めてビーフの旨味とお米の相性の良さを確認することができました。

日本の牛丼のように、あまり混ぜ混ぜしないで食べるのもいいですが、せっかくですからビーフの美味しさを、お米にちゃんと絡めて食べたいもの。そして奇しくも地球の反対側に存在する、もう1つの牛丼をしっかり味わってもらえたら、と思います。

アホース・デ・アウサ

牛カルビとキャッサバ芋のシチュー

材料(4人前)

  • インディカ米 290g
  • シャルケ(カルネセッカ) 230g
  • 玉ねぎ 大1個
  • おろしにんにく 大さじ1
  • EX-Vオリーブ油 大さじ1
  • 塩 適宜
  • 水 800g

*作り方*

  1. シャルケは一昼夜、水につけて塩抜きする。水は数回替えること。
  2. 塩が抜けたシャルケを小さく切り分ける。
  3. 玉ねぎをスライスにする。
  4. 鍋に洗ったイナディカ米と水、塩を入れて炊く。
  5. フライパンにEx-Vオリーブ油を熱し、②のシャルケをカリカリになるまで炒める。
  6. ⑤のフライパンからシャルケだけを取り出し、ペーパータオルなどで軽く油を切る。
  7. おろしにんにくと③を⑥のフライパンで柔らかくなるまで炒める。キツネ色になるまで炒めないこと。
  8. ⑦へ⑤を戻して混ぜ合わせ、好みで塩を加える。
  9. ④に⑧をトッピングして完成。

キベベ

冬の定番スープにもうひと味 カルネセッカのキベベ

冬の定番スープにもうひと味 カルネセッカのキベベ

パンプキンとスクワッシュ。料理好きさんなら、悩んだことがあるかも知れません。要するに日本カボチャのようなぽくぽくした食感のものがパンプキン、一方のスクワッシュはズッキーニがもう少し甘くなったような西洋カボチャに分類されるもの。水分が多いのが特徴です。

日本ではパンプキンこそ馴染み深く、逆にスクワッシュはまだまだ浸透・普及しきっていませんが、欧米圏では違います。南米も同様で、ペルーのザパージョなど特に冬場のスープに使う定番食材。ブラジルでもお菓子などに使うアボブラに対し、スクワッシュ系はアボブラ・ベルメーリョとして使い分けています。

キベベはそんなスクワッシュのスープ。やはり冬場に好まれていますが、それにもうひと味プラスすると、美味しさも、あたたかさも、そしてボリュームもアップ!カルネセッカやシャルケなどの塩漬け牛肉を一緒に煮込みましょう。

カボチャのポタージュのような洗練された印象よりも、南米の大地に根付いた素朴さとたくましさが凝縮されたスープ・キベベ。今年の冬にいかがですか。

カルネセッカのキベベ

カルネセッカのキベベ

材料(6~7人前)

  • カルネセッカ(塩漬け牛肉) 500g
  • カボチャ 1kg
  • 玉ねぎ 1個
  • ピーマン 1個
  • トマト 2個
  • おろしにんにくorきざみにんにく 小さじ2
  • バイア風スパイスミックス 適宜
  • ローレル 1枚
  • お湯 120cc
  • 油 大さじ3
  • バジル 適宜
  • 塩・こしょう 適宜
  • カルネセッカのゆで汁 200cc

*作り方*

  1. カルネセッカは小さく切り分けてから一晩、水に浸けて塩抜きする。水は数回、取り替えること。
  2. ①を水切りし、ひたひたの水でやわらかくなるまで煮る。
  3. 火からおろして、ゆで汁を200cc取り出し、残りは捨てる。塩加減を確認し、味が濃い場合は数回湯がいてもOK。
  4. カボチャは皮を剥いて、小口切りにする。
  5. 玉ねぎをみじん切りにする。
  6. トマトは皮と種を除いてざく切り、ピーマンも種を外してざく切りにする。
  7. 鍋に油大さじ2を熱し、⑤の玉ねぎとおろしにんにくを軽く色付くまで炒める。
  8. ③のゆで汁の100㏄と、⑥の野菜、ローレル、バイア風スパイスミックスを加えて煮る。
  9. ③のお肉を加えて、全体がドロッとするまで煮つめる。
  10. ④のカボチャと③の残りのゆで汁100㏄とを入れピュレ状になるまで煮る。
  11. お好みでみじん切りにしたコリアンダーやパセリをのせて出来上がり。

パソッカ

ブラジル版“コンビーフポテトサンドイッチの具” パソッカ

ブラジル版“コンビーフポテトサンドイッチの具” パソッカ

ブラジルの食べ物でパソッカ、というと最初に思い浮かべるのはピーナッツを粉末化して砂糖を加え、プレス・成型した甘い、甘いおやつ。手で摘むとほろほろ崩れてしまうデリケートさなのに、素朴で力強く、ついでに言うと、ブラジル国内で知らない人なんていないんじゃないかしら?と感じてしまうほどポピュラーなお菓子です。けれども、それとは別の「パソッカ」もブラジルには存在していて、こちらは一転、塩味ベースのお料理。メイン料理にもなりうるほどの、おかずです。このおかずになるパソッカは、ブラジル北部の伝統料理で源流を探ればきっと、西アフリカに辿り着けるのではないかな、と思いますけれど不思議なのは、片や甘い甘いお菓子。片やお肉や芋を塩で調理したおかず。こんな全く違うもの同士が何故、同じ名前を冠しているのでしょうか。

パソッカ。そもそもこの言葉には、臼で突いて何かを細かく砕き、別のものと混ぜる、という意味があります。…なるほど、そういう前提であるならば、お菓子のパソッカも、お料理のパソッカも同じ括りに入りますね。お菓子のパソッカではピーナッツを砕いて砂糖と混ぜ、お料理のパソッカはカルネセッカやシャルケといった塩漬けのお肉を細かくほぐし、キャッサバ芋の粉末と混ぜる、と。

実際に作ったお料理のパソッカを食べて、最初に感じたのは昔懐かしいコンビーフとポテトのサンドイッチ。カリカリに炒めたコンビーフとマッシュポテトをマヨネーズで和えて、パンでサンドしたあれと、雰囲気がとてもよく似ています。…でも、それもそのはず。コンビーフとは本来は英語のコーンドビーフ(塩漬けした牛肉)ですから、シャルケやカルネセッカの親戚とも言える加工食品ですし、ポテトとキャッサバは種類こそ違えど、芋は芋。

最近、某コンビニエンスストア・チェーンのサンドイッチに、ある懐かしいコンビーフとポテトのものがラインナップされていて、つい目に留めてしまったんですが、お料理のパソッカもそういう意味では日本人に馴染みやすい味と言えそうです。
但し、北部ブラジル式の食べ方に倣うなら、パンではなくてご飯に添えるのがスタイル。かなり食べ応えのあるボリューム満点な献立となりそうです。

パソッカ

カルネセッカのキベベ

材料(4~7人前)

  • シャルケ(カルネセッカ) 1パック
  • バター 大さじ2+1/2
  • 玉ねぎ 1個
  • キャッサバ芋の粉末* 200cc
  • 塩 適宜

*キャッサバ芋の粉末とは、文字通りキャッサバ芋を乾燥して粉末化したもの。ファリーニャ・デ・マンジョッカという名前でブラジル系のショップで売られています。非加熱のもの(クルア)とロースト済みのもの(トハーダ)があり、パソッカではクルアを使います。

*作り方*

  1. シャルケ(カルネセッカ)を事前に一昼夜、水に浸けて塩抜きする。水は数回換えること。
  2. 玉ねぎをみじん切りにする。
  3. ①をフードプロセッサーにかけて細かくほぐす。
  4. フライパンにバターを熱し、③を炒める。
  5. ④に②の玉ねぎを加え、全体がカリカリになるまで炒める。
  6. ⑤にキャッサバ芋の粉末を加え、さらにしっかりと炒める。

できあがったパソッカは、ご飯に添えて混ぜながら食べるのが北部ブラジル式。
また、仕上がりのペーストの緩さは、お好みで調節してください。

プッシェーロ

スペイン発アルゼンチン経由ブラジル着 プッシェーロ

スペイン発アルゼンチン経由ブラジル着 プッシェーロ

台所を預かっている世界各国のお母さんたち。各国の料理は色々あれど、お母さんたちが考えることは案外、似ていることが多いです。例えば、どこの国へ行っても大体、冷蔵庫にあるものをあれもこれもグツグツ煮込んだお料理。
ともすれば冷蔵庫の片付け料理とも言えてしまいそうな“ごった煮”は、けれども様々な美味しいダシが渾然一体となった、魔法のお鍋になってしまいますよね。
ブラジル南部。もう、アルゼンチンやウルグアイに程近い、リオ・グランデ・スル州などでよく食べられているプッシェーロ、というお料理があります。これは、様々な野菜とお肉を煮込んだ、まさしくラテン式ごった煮。恐らく、元々はスペイン料理だったものが、アルゼンチンやウルグアイに伝わって、今度はそれが地続きにブラジル南部に伝わったのでしょう。今ではブラジル南部はもちろん、サンパウロやリオ・デ・ジャネイロでもよく食べられているそうです。
カルディラーダがシーフード中心で作られるのに対し、プッシェーロは豊富な野菜とお肉中心。特に、こうしなければならない、というスタイルのないお料理ですが、キャベツとサツマイモとガルバンゾー(ひよこ豆)は入っていることがとても多い具材でしょう。また、写真では具を小さめに切り分けて煮込んでいますが、例えばニンジンを1本の半分、ジャガイモは1個まるごと、と豪快で煮込むことも多いようです。
ポトフよりもずっと気さくで、素朴で、元気のいいプッシェーロ。大きなお鍋でどかん、と作ってもいいんじゃないでしょうか。

プッシェーロ

カルネセッカのキベベ

材料(4~5人前)

  • ガルバンゾー(ひよこ豆) 100g
  • サツマイモ 1本
  • ジャガイモ 小2個
  • キャベツ 1/4個
  • ニンジン 1本
  • ピーマン 2個
  • トマト 1個
  • 玉ねぎ 1個
  • おろしにんにく 大さじ1
  • カラブレーザ・デフマーダ 2本
  • 豚モモ肉 250g
  • 牛モモ肉 250g
  • ベーコン 150g
  • 月桂樹の葉(ローレル) 1枚
  • EX-Vオリーブ油 適宜
  • 塩・こしょう 適宜

*作り方*

  1. ガルバンゾーを前夜からひと晩、水に漬けてもどす。
  2. ①をたっぷり水で煮る。沸騰するまでは強火、沸騰後はトロ火でお鍋のフタを閉めて、やわらかくなるまで煮る。
  3. 玉ねぎはみじん切りに、トマトは皮と種を除いてざく切りにする。
  4. ニンジン、ジャガイモ、サツマイモは皮を剥いて好みの大きさに、ピーマンは種を除いてひと口大に、それぞれ切り分ける。
  5. キャベツをザク切りにする。
  6. ベーコン、カラブレーザ、牛モモ、豚モモをひと口大に切り分ける。
  7. 大きなお鍋にオリーブ油を熱し、③の玉ねぎとおろしにんにくを炒める。
  8. ⑦がしんなりしてきたら、③のトマトと⑥のベーコン、カラブレーザも加えて炒める。
  9. ⑧に⑥の牛モモと豚モモも加えて炒める。
  10. ⑨に④のニンジン、ジャガイモ、サツマイモ、ピーマンを加え、水(*)をひたひたになるまで加えて煮る。
  11. ⑩に⑤のキャベツと、ローレルも加える。
  12. ②で柔らかくなるまで煮たガルバンゾーを⑪に加えて、さらにトロ火でコトコト煮る。
  13. 塩、こしょうで味を調える。

スープストックがあれば、水よりも好ましい。ブイヨン・キューブを活用するのも手。

バカ・アトラーダ

合言葉は“ぬかるみ”めざせ“ぬかるみ” バカ・アトラーダ

合言葉は“ぬかるみ”めざせ“ぬかるみ” バカ・アトラーダ

日本人が大好きな和食・肉じゃが。ですが、いざその気になって探すと、お肉とその土地のイモ類の煮込み料理、というのは案外と世界各地に少なかったりします。個人的には、咄嗟に思い浮かぶのはフランス・アルザス地方のお料理・ベックオフくらい。肉類と煮込む最右翼は世界各国、玉ねぎのようでこれがイモ類になると途端に、煮込んだシチュー状のものよりもポテトサラダのようなお料理が目に付いてしまう傾向が強いようです。イモ類は煮崩れしやすいから、でしょうか。ですが、そんな“あるようでない、世界各地の肉じゃが的お料理”が、ブラジルにはあるんです。

ブラジルの肉じゃがに使用しているイモはキャッサバ。そして一緒に煮込むお肉は牛肉となりますが、ここまで書くとすでにご紹介している コステラ・コン・マンジョッカのこと?そう思われてしまうかもしれません。実際、お料理に使う材料だけを見るならば、コステラ・コン・マンジョッカも同様です。ですが、今回ご紹介したく思っているのはコステラ・コン・マンジョッカではなく、バカ・アトラーダというお料理。…はて、一体どう違うお料理同士なんでしょうか。

コステラ・コン・マンジョッカ。この料理名を日本語訳すると「牛カルビとキャッサバ」となりますが、一方のバカ・アトラーダは「牛肉のぬかるみ」とでも訳しましょうか。バカは牛肉、アトラーダは湿原とかぬかるみ、という意味なんですね。この料理名の差異と、実際に作られたお料理同士を見比べる限り、コステラ・コン・マンジョッカはビーフもキャッサバ芋も、形がしっかり残っていて、バカ・アトラーダはかなり煮崩れている印象が強いです。…まさに、その名の通り、と言ったところでしょうか。
とは言え、ブラジルで暮らす人々はきっとそんな些細な違いなどあまり意識していなくて、煮崩れていても「うちのコステラ・コン・マンジョッカがね~」と話すお母さんもいらっしゃるでしょうし、逆に短時間煮込んだだけで「昨夜、作ったバカ・アトラーダは~」とお喋りするお母さんもたくさんいることでしょう。
さてさて、みなさんはコステラ・コン・マンジョッカとバカ・アトラーダのどちらがお好みですか?ちなみにわたしは、両方大好きです!

バカ・アトラーダ

カルネセッカのキベベ

材料(7~8人前)

  • 牛カルビ(骨なし) 750g
  • マンジョッカ(キャッサバ芋) 1パック
  • 玉ねぎ 1.5個
  • トマト 1個
  • レモン 1個
  • おろしにんにく 適宜
  • 塩 適宜
  • チリソース 適宜
  • 植物油 適宜

*作り方*

  1. レモン汁を絞る。
  2. 牛カルビをひと口大に切り分けて、塩、おろしにんにく、①のレモン汁を合わせたピックル液に漬け、冷蔵庫で3時間休ませる。
  3. 玉ねぎをみじん切りにする。
  4. トマトから種と皮を除き、ざく切りにする。
  5. 鍋に植物油を熱し、②のカルビと③の玉ねぎを色づくまで炒めてから火を弱めて鍋にフタ。時々、お湯を足して肉が柔らかくなるまでじっくり煮る。
  6. ⑤に④のトマトとマンジョッカを加える。
  7. ぐずぐずになるまで煮込んだら、仕上げにタバスコなどのチリソースを加える。

チリソースはブラジルのマラゲッタ・ソースが望ましいですが、入手困難なのでタバスコで代用するといいでしょう。

ピカジンニョ

カリオカのマダムたち御用達 ピカジンニョ

カリオカのマダムたち御用達 ピカジンニョ

ブラジル第二の都市、リオ・デ・ジャネイロ。そしてリオの人々のことを、ブラジルではカリオカ、と呼びます。例えば北海道の人のことを日本国内ではどさんこ、と呼ぶように、リオのカリオカ、サン・パウロのパウリスタ、リオ・グランデ・スルのガウッショ、ミナス・ジェイラスのミネイラなどなど、ブラジルの各地域にそこで暮らす人々を指す呼び名がありまして。
では、そのカリオカのそれもマダムたちがとても好んでいるお料理があります。名前はピカジンニョ。単語の意味だけならば細かく刻んだもの、となりますが、その名の通りアルカトラ(牛のランプ肉)やベーコンを賽の目以下に切り分けて玉ねぎやトマトと一緒に炒め煮にしたもの。
ポイントは仕上げに加えるブラジルのチリソース・マラゲッタです。これを白いご飯に添えてサーブするのが伝統的なのですが、そもそもどうしてこのピカジンニョがカリオカのマダム達に人気なのでしょうか。

わたしたち日本でも、主婦に人気の高いお料理には2種類あると思います。1つは、当然ですけれど食べてとても美味しいもの。つまり、食べる側の立場で好きなお料理ということですね。ではもう1つは、と言えばそうです。作る側の立場から好きな、手間が掛からなくて、でも見栄えがよくて、そして美味しいもの。
急なお客様にも安心して出せて、でも作るのは意外にラクチンなもの。日本の食卓で例示するならばすき焼きあたりが筆頭格でしょうね。

はい、カリオカのマダムたちはいざという時に、このピカジンニョを作るのだといいます。豪華で、伝統的で、なのにささっと作れるピカジンニョ。洋の東西、地域の南北を問わず、世界各国の主婦が考えることは、みんな一緒。
とはいえ、もしリオ・デ・ジャネイロのご家庭を訪ねる機会に恵まれて、ピカジンニョを供されたとしても。…ラクチンをした、なんて考えるのは禁止ですよ!

ピカジンニョ

カルネセッカのキベベ

材料(4人前)

  • ステーキ用牛ランプ肉 500g
  • 皮付きベーコン 1パック
  • 玉ねぎ 1/2個
  • 完熟トマト 1個
  • 塩・こしょう 適宜
  • 水 120cc
  • マラゲッタ・ソース 適宜

*作り方*

  1. 皮付きベーコンと牛ランプ肉を賽の目に切る。
  2. 玉ねぎをみじん切りに、トマトは皮と種を除いてざく切りにする。
  3. フライパンに①のベーコンを入れ、中火で炒める。
  4. ③のベーコンをカリカリになるまで炒めたら、①のビーフ、②の玉ねぎとトマトも加えて炒める。
  5. ④に塩・こしょうを加えて、ビーフにしっかりと焼き色がつくまで炒める。
  6. ⑤に水を加えてフライパンに蓋をし、沸騰させる。
  7. ⑥をごく弱火にして、ビーフが充分に柔らかく、また煮汁にトロミがでるまで煮る。
  8. 仕上げにマラゲッタ・ソースを加えてピリ辛味に調える。

※マラゲッタ・ソースの入手が難しければタバスコでも代用可。サーブする時は白いご飯を添えましょう。

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土・日の営業及び出荷作業は行っておりません。臨時休業や変更がある場合は、当ページ及びSNS等でお知らせいたします。